
私の職業は、殺陣師であり、武術家です。
よく、実際の武道と殺陣は一体、どこが違うのかと尋ねられる事があります。
答えは簡単で、武術は生き残る手段ではありますが、そこにドラマはないという事です・・・。
武術の技である「必殺技」は確かに必要ですが、それだけではドラマは盛り上がりません。
・・・やっぱりライバルがいたり、主人公が成長に伸び悩んだりする姿を見る事で、視聴者は時には共感を覚えたり、登場人物を応援したり。
その情況にも、共鳴したりします。
・・・殺陣は、娯楽の中にあるものなのです。
考えてみれば、「戦いの見せ場である殺陣に、武術の素養が必要ない」というのも不思議に感じられる方も多いことでしょう。
ところが実は、それはそんなに不思議な事でもないのです。
・・・殺陣とは、元来は能。
つまり、舞踊から来ている技術だからです。
戦っている様を、舞で表現していたのが、能から歌舞伎になり、舞台や映画、テレビにその技術が移って発展をしてきました。
舞曲がいつしか、人間の生き方を感じさせるドラマへと発展を遂げたのです。
私の師匠・林邦史朗は、半世紀以上も映画やテレビ、舞台の殺陣に関わった人物で、特にNHK大河ドラマの殺陣を50年以上も手掛けていました。
・・・このドラマが他と違うのは、常に時代考証家が監修し、必要とあれば例えば剣術流派の宗家を呼ぶなど、その時代性にこだわった制作態勢でした。
その中で、もともと武術家であった師匠は、たくさんの時代に巡り合い、侍の文化はもちろん忍術、そして時代を生き抜く術を感じて生きておられました。
その総てを、私も長らく師の傍に居たことで吸収し、共に研究を続けてきた人間だからです。
大事なものは、人から人へと伝わるものである・・・。
資料として遺すならば、正しく伝える・・・。
このHPでは、その一点を大事にしていきたいと考えています。